14.光合成細菌RAP99のS-180抗腫瘍試験(概要) | 専門家向け

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光合成細菌RAP99の抗腫瘍活性試験

試験の内容については、医学・薬理学の学会「応用薬理研究会」から発刊されている専門学術誌「応用薬理」に投稿して受理され、平成18年9月号(Vol.71, No.1/2)に掲載されました。

「応用薬理研究会」は、世界でもトップレベルの学会であり、国内において海外の製薬会社が新薬申請時の許可を得る際、厚生労働省に対し重要な役割を果たす機関でもあります。

以下に、投稿論文を掲載いたしますのでご覧ください。

マウスにおける Sarcoma-180腫瘍に及ぼす光合成細菌RAP99の抗腫瘍活性

石川正明1),菅野秀一1),氏部真優子1),佐々木崇光1), 日高 康博2),戸田 順博2)

1) 〒981-8558 仙台市青葉区小松島4-4-1 東北薬科大学薬物治療学教室

2) 〒652-0884兵庫県神戸市兵庫区和田山通1-2-25-D410 ティーエフケイ株式会社,生産・技術開発

Antitumor Activity of purple photosynthetic bacteria RAP99, against Sarcoma-180 in Mice

Masaaki Ishikawa1), Syu-ichi Kanno1), Mayuko Ujibe1), Takamitsu Sasaki1),Yasuhiro Hidaka2), Nobuhiro Toda2)

1) Department of Clinical Pharmacotherapy, Tohoku Pharmaceutical Science,

 4-4-1 Komatushima, Aoba-ku, Sendai, Japan.

2)TFK Co., Ltd., 1-2-25-D410 Wadayamadori Hyogo-ku, Kobe, Japan.

Received June 6, 2006, Accepted September 13, 2006

 purple photosynthetic bacteria RAP99, was tested for their antitumor activity against transplanted Sarcoma 180 (S-180) in mice.  RAP99 was given to ddY mice before or after the transplantation of S-180 tumors, and the development of the intradermally or intraperitoneally transplanted S-180 tumors and the survival rate were observed.  RAP99 increased the life span of tumor-implanted mice, when orally administered alone or in combination with antitumor drugs (mitomycin C and 5-fluorouracil).  In addition, oral administration of RAP99 concurrently with mitomycin C or 5-fluorouracil, significantly increased tumor regression as compared with the respective chemotherapy alone, illustrating the adjuvant effect of orally administered RAP99. RAP99 was found to potentiate NK and macrophage activity (production of NO and TNF-α), which is associated with tumor growth suppression. Furthermore, RAP99 was not cytotoxic in cell cultures and the antitumor activity was abolished by pretreatment of mice with inhibitors of macrophages (2-chloroadenosine) or T cells (cyclosporine A).  These results suggest the benefits of potential clinical trials using RAP99 combined with cheomtherapetutic agents in order to maximize enhanced immunity while potentially minimizing postchemotherapeutic deteriorated reactions.

Key words: purple photosynthetic bacteria RAP99 / Antitumor activity / Sarcoma-180 / NK activity/mouse.

緒 言

光合成細菌RAP99(以下RAP99)は、戸田らにより開発された BP-7434(現在の名称RAP99)の生菌体とその代謝産生成分の濃縮加工物である。当初RAP99は、土壌生態系の自然浄化能力回復作用として開発されたが、菌体の生産する生理活性物質が動植物の細菌性疾患に有効であることから、ヒトにおける有用性も示唆された。ヒトにおける食用試験により末期がん、高血圧症、脳梗塞、心筋梗塞、うつ病、不眠症あるいはアトピー性皮膚炎からの回復あるいは治癒効果が明らかとされた。さらに、構成成分の分析により、糖とタンパク質を主成分とし、ビタミン類、アミノ酸、カロチノイドあるいは不飽和脂肪酸を含むことが明らかとなった経緯を有する。

近年、戸田らによりRAP99のラットへの90日間反復投与による毒性試験の結果が報告され、極めて安全であることが明らかとなった(戸田ら、2006)。抗腫瘍効果を示す免疫調整薬の多くが糖タンパク質である(Tsuchiya et al., 1989; Sakagami et al., 1991; Popova et al., 1993; Sasaki et al., 1993; Wang et al., 1996; Noda et al., 1996; Maeda et al., 1998; Kim et al., 2004; Gao et al., 2005)。本論文においては、RAP99の抗腫瘍作用を補完代替医療素材としての可能性の点から検討した。

実験材料および方法

化合物と薬物 

RAP99(Lot No. 1603FA-FD0098、ティーエフケイ、神戸)は、PBS緩衝液に希釈して培養細胞に添加した。対照群の細胞にはPBS緩衝液のみを添加した。マウスには、生理食塩液で希釈して経口投与した。いずれも用事調整して使用した。マイトマイシンC(MMC)と5-フルオロウラシル(5-FU)は協和発酵(東京)およびその他の試薬はナカライテスク(京都)と和光純薬(大阪)から購入して使用した。

腫瘍細胞

Sarcoma-180 (S-180)とYAC-1細胞は東北大学附属医用細胞資源センターより分与された。RAW 264.7 細胞はAmerican Type Culture Collection (Rockville, MO, USA)、 HL-60ヒト白血病細胞はRIKEN BRCから購入した。S-180 細胞は、ddY系雄性マウス腹腔内に1×106個を移植して継代維持した。実験には移植後1週間経過した細胞を用いた。S-180、YAC-1、RAW 264.7および HL-60細胞はペニシリン(100単位/mL)、ストレプトマイシン(100 μg/mL)及び10% 加熱不活性化胎児牛血清を含むRPMI 1640 培地(イワキ)で湿度95%、5% 一酸化炭素濃度、37℃下で培養した。細胞数はトリパンブルー法により計測した。

使用動物

ddY系雄性マウス(22~24g、5週令)を 日本SLC(浜松)から購入して使用した。実験期間は実験動物飼育用固型飼料(日本クレア製、CE-2)と水道水を自由に摂取させ、温度23±1℃、湿度50±5%、12時間周期(明期 07:00~19:00、暗期 19:00~07:00)の明暗サイクル環境下で飼育した。動物実験は、東北薬科大学動物実験ガイドラインに従って行った。

抗腫瘍活性の測定

実験には一群10匹のマウスを用いた。固形癌:S-180 106個をマウスの左大腿部皮下に接種し、投与スケジュールに従い所定の濃度のをマウス用経口ゾンデで投与した。制癌薬は腹腔内に1日1回10日間投与した。腫瘍細胞接種18日後に、マウスを頚椎脱臼法で殺し、左右両肢の皮膚を剥離した後に大腿部基部から足首まで切断した。左肢の右肢に対する重量差をもって、腫瘍重量とした。各群ごとに、平均重量を求め、同時に実施した対照の生理食塩液投与群の平均重量差を用い、腫瘍抑制率を算出した。腹水癌:S-180細胞1×106個をマウス腹腔内に接種し、24時間後から所定の濃度のRAP99をマウス用経口ゾンデで、1日1回5日間投与した。制癌薬は腹腔内に1日1回5日間投与した。癌細胞接種後55日間にわたり死亡の有無を観察し、生存日数と生存匹数により抗腫瘍効果を検討した(Kanno et al., 2005)。

細胞増殖実験

生細胞は色素還元反応を利用したMTT法で測定した(Kanno et al., 2003)。S-180、RAW264.7あるいは HL-60細胞を96-well plateに、培地0.1 mLウエルあたり4×104 細胞濃度で播種した。1日後、細胞に種々の濃度の試料を添加して培養した。所定の時間培養後に MTT試薬(滅菌PBSに 5 mg/mLで溶解)を10 μL /wellを添加して4時間培養し、DMSO 100 μL/wellで着色物質(formazan)を抽出した。分光光度計 (microplate reader) を用いて590 nmの波長で抽出液の吸光度を測定した。

NO遊離の測定

細胞を96穴プレートに4×104 細胞を播種し、10% FBSを含むRPMI 1640 培地で24時間培養した。細胞に種々の濃度の試料を添加してさらに24時間培養した。上清液50 μLにGriess試薬(0.5%スルファニルアミド、2.5% リン酸、0.05% ナフチルエチレンジアミン)50 μLと混和して、分光光度計 (microplate reader) を用いて540 nmの波長で吸光度を測定した (Gomez-Flores and Weber, 2000)。

NK活性の測定

1群6匹のマウスに、RAP99 (0.0001, 0.001, 0.01, 0.1あるいは 1 mg/kg) を静脈内に投与した。投与24時間後に脾臓を摘出し、2匹で1試料とした。摘出した脾臓を分散し血液を溶血させた後に細胞数を計測した。96穴プレートに100 μCiの51Cr標識した標的細胞YAC-1 (2 x 105) に対して1:10, 1:20, 1:50, 1:100の比率の脾臓を4時間培養し、遠心分離して上清中の遊離51Cr量を液体シンチレーションカウンターで測定し、% 細胞傷害性を算出した (Gomez-Flores and Weber, 2000)。

TNF-αの測定

細胞を96穴プレートに4×104 細胞を播種し、10% FBSを含むRPMI 1640 培地で24時間培養した。細胞に種々の濃度の試料を添加してさらに24時間培養した。TNF-αの定量はMouse TNF-α Immunoassay Kit (Biosource) のプロトコールに従い、上清液50 μLを使用し分光光度計 (microplate reader) を用いて450 nmの波長で吸光度を測定して行った (Gomez-Flores and Weber, 2000)。

統計学的処理

平均値と標準誤差を算出し、有意差検定はStudent’sのt検定を用い、危険率0.05% 未満をもって有意差とした。

結 果

抗腫瘍活性

マウスを用いたRAP99の細胞増殖抑制作用をS-180 癌細胞で検討した。

 固形腫瘍:RAP99の細胞増殖抑制作用の有無と宿主介在性であるか否かを検討するために、S-180 癌細胞の接種前あるいは接種後にRAP99 を投与して検討した。

1)RAP99を隔日3回経口投与して、最終投与2日後にS-180 癌細胞 (1×106個) を皮下接種し、癌細胞を接種して18日後に腫瘍重量を測定した。各群ごとに平均腫瘍重量を求め同時に実施した対照の生理食塩液投与群の平均腫瘍重量との比較から抗腫瘍作用を算出した。RAP99前投与により0.5 mg/kgで5.1%、1 mg/kgで14.3%、5 mg/kg で19.6%、10 mg/kgで55.3%の腫瘍増殖抑制作用が観察された (Fig. 1)。S-180あるいはHL-60 細胞にRAP99(1, 3, 6あるいは10mg/mL)を添加して24時間培養した時、殺細胞作用は観察されなかった。癌細胞に対する直接的な殺細胞作用は認められず、さらにRAP99癌細胞の接種前にRAP99を投与した時、用量依存性の細胞増殖抑制作用が観察されたことから宿主介在性の抗腫瘍作用が示唆された。

Fig. 1

Effect of preadministered RAP99 on the growth of S-180 solid tumor in mice

The antitumor activity of RAP99 was examined against solid-type S-180 in mice.  Mice were inoculated subcutaneously in the right inguinal region with S-180 ascites cells (106 cells/mouse).  Mice were given oral RAP99 3 times, 6, 4, 2 days before subcutaneous inoculation with the tumor cells.  Control mice received saline. On the 18th day after S-180 cell inoculation, mice were sacrificed, and the tumors were removed and weighed. Each data point represents the mean±S.E. of 10 mice.  *p<0.05 vs. control group.

 

2)S-180 癌細胞 (1×106個) を皮下接種して24時間後から1日1回10日間RAP99を経口投与し、癌細胞を接種して18日後に腫瘍重量を測定した。各群ごとに平均腫瘍重量を求め同時に実施した対照の生理食塩液投与群の平均腫瘍重量との比較から抗腫瘍作用を算出した。3回繰返し行った。

1回目:RAP99の0.1 mg/kgで 28.9%、0.5 mg/kgで49.3%、1 mg/kgで50.8%、5 mg/kg で44.2%、10 mg/kgで70.2%の腫瘍増殖抑制作用が観察された。

2回目:RAP99の0.1 mg/kgで 11.5% 、0.5 mg/kgで25.4%、1 mg/kgで60.1%、5 mg/kg で53.2%、10 mg/kgで60.8%の腫瘍増殖抑制作用が観察された。

3回目: RAP99の0.1 mg/kgで 5.1%、0.5 mg/kgで41.6%、1 mg/kgで41.1%、5 mg/kg で37.9%、10 mg/kgで80.3% の腫瘍増殖抑制作用が観察された。

マクロファージ活性阻害薬2-chloroadenosine 0.1 mg/マウス (i.p.) をS-180 癌細胞 (1×106個) 接種6、4、3および 1日前に4回前処置(Schultz et al., 1986)すると、RAP99 1、5 あるいは10 mg/kgを経

口投与による腫瘍増殖抑制作用は弱められ、12.8、11.2あるいは10.5%であった。1群5匹のマウスを用いてT-細胞阻害薬cyclosporone A 2 mg/マウス (i.p.) をS-180 癌細胞 (1×106個) 接種6、4、3および 1日前に4回前処置 (TenHagen et al., 1998) すると、RAP99 5 mg/kgを経口投与による腫瘍増殖抑制作用は弱められ、15.6%であった。

3回繰り返し行った平均値では、RAP99の0.1 mg/kgで 15.1%、0.5 mg/kgで38.7%、1 mg/kgで50.7%、5 mg/kg で45.1%、10 mg/kgで70.4% の腫瘍増殖抑制作用が観察された(Fig. 2)。S-180細胞 (106/0.1 mL) とRAP99 (1 mg/mL) を24時間混合培養して、マウス腹腔内に接種した時、細胞単独と同程度の生存日数が観察された。

Fig. 2

Antitumor activity of RAP99 on the growth of S-180 solid tumor in mice

Mice were injected as in Fig. 1 with S-180 cells.  After 24 hr, the animals (n=10) received an oral injection of RAP99 (0.1, 0.5, 1, 5, or 10 mg/kg/day), continuing for 10 consecutive days.  Control mice received saline. On the 18th day after S-180 cell inoculation, mice were sacrificed, and the tumors were removed and weighed. Each data point represents the mean±S.E. of three independent experiments.  *p<0.05 vs. control group.

 併用効果: RAP99は経口投与により細胞増殖抑制作用が観察されたので、制がん薬との併用効果についても検討した。 S-180 癌細胞106個を大腿部皮下に接種 (0.2 mL/マウス) し、24時間後から1日1回10日間RAP99は経口投与、制がん薬は腹腔内に投与した。癌細胞を接種して18日後に腫瘍重量を測定し、各群ごとに平均腫瘍重量を求め同時に実施した対照の生理食塩液投与群の平均腫瘍重量との比較から抗腫瘍作用を算出した。

RAP99 単独投与群では、0.001 mg/kgで 15.0%、0.01 mg/kgで26.6%、0.1 mg/kgで27.8% の腫瘍増殖抑制作用が観察された。

MMC 0.03 mg/kg 単独投与群では 25.1%、 RAP99と併用することにより、RAP99 0.001 mg/kgで 42.5%、 0.01mg/kgで45.2% の腫瘍増殖抑制作用が観察された。5-FU 0.5 mg/kg 単独投与群では 15.2%、 RAP99と併用することにより、RAP99 0.001mg/kgで 46.3%、0.01mg/kgで45.1% の腫瘍増殖抑制作用が観察された。MMCとRAP99 0.001 mg/kg、あるいは 5-FU とRAP99 0.001あるいは0.01 mg/kgとの併用により腫瘍増殖抑制作用の増強が観察された (Fig. 3)。

Fig. 3

Antitumor activity of RAP99 combined with 5-fluorouracil or mitomycin C on the growth of S-180 solid tumor in mice

The antitumor activity of RAP99 combined with 5-fluorouracil (5-FU) or mitomycin C (MMC) was examined against solid-type S-180 in mice.  Mice were injected as in Fig. 1 with S-180 cells. Mice (n=10) received intraperitoneal MMC (0.02 mg/kg/day) or 5-FU (0.5 mg/kg/day) either alone, or in combination with oral RAP99 (0.001, 0.01 or 0.1 mg/kg/day) every day for 10 days, beginning 24 hr after tumor inoculation. Control mice received saline.  On the 18th day after S-180 cell inoculation, mice were sacrificed, and the tumors were removed and weighed. Each data point represents the mean±S.E. of 10 mice. *p<0.05 vs. corresponding control group.

 腹水型腫瘍: S-180 癌細胞106個を腹腔内に接種 (0.2 mL/マウス) し、24時間後から1日1回5日間、RAP99は経口投与、MMC (0.5 mg/kg) と5-FU(8 mg/kg)は腹腔内に投与した。S-180を接種して55日間マウスの死亡の有無を観察し, 癌細胞のみを投与した群を対照群として生存日数の平均値と生存匹を比較した。

腫瘍増殖速度の速い腹水型腫瘍のS-180に対して、RAP99  (0.1、1あるいは10 mg/kg) 単独群では生存日数と生存数の比較において延命効果は認められなかった。

MMC (0.5 mg/kg, i.p.) あるいは5-FU (8 mg/kg) 単独群では生存日数と生存匹数において軽度の延命効果が認められた。MMCとRAP99との併用投与により延命効果が認められ、特にRAP99の0.1あるいは1 mg/kg との併用で著明であった (Fig. 4)。

5-FUとRAP99との併用群ではRAP99の1 mg/kg  との併用においてのみ延命効果が認められた。

NK活性

Fig. 4

Antitumor activity of RAP99 combined with MMC or 5-FU on the growth of S-180 liquid tumor in mice

The antitumor activity of RAP99 was examined against liquid-type S-180 in mice. S-180 cells suspended in saline were inoculated intraperitoneally in mice (106cells/mouse). Mice received intraperitoneal MMC (0.5 mg/kg/day) or 5-FU (8 mg/kg/day) either alone, or in combination with oral RAP99 (0.1, 1 or 10 mg/kg/day) every day for 5 days, beginning 24 hr after tumor inoculation. Control mice received saline. Lethality was observed for 55 days.  The antitumor activity of RAP99 was evaluated by the number of regressors, which are negative for tumors, and the percentage increase in the life span (%ILS), calculated from the following equation: %ILS= T-C/C x 100 where T and C represent the mean survival in days of the treated group excluding regressors at 55 days and the mean survival in days of the vehicle control group, respectively. Each data point represents the mean±S.E. of 10 mice.  *p<0.05 vs. corresponding control group.

癌細胞の接種前にRAP99を投与した時、用量依存性の細胞増殖抑制作用が観察されたこと、あるいはマクロファージあるいはT細胞活性阻害薬の前処置によりRAP99 の腫瘍増殖抑制作用が弱められたことから宿主介在性(免疫反応)の抗腫瘍作用が示唆された。この点を明らかとするために、まずin vivoの免疫反応の指標としてNK(ナチュラルキラー)活性を測定した。YAC-1 (2 x 104) とマウスにRAP99 (0.0001、0.001、0.01、0.1あるいは 1 mg/kg) を静脈内投与して得た脾臓細胞の1:10, 1:20, 1:50, 1:100の比率の培養試験において、殺細胞作用、つまりNK活性の誘導が観察された。特に、RAP99 の0.1mg/kg投与により著明にNK活性の誘導が観察された (Fig. 5A)。標的細胞YAC-1 に対して1:50の比率の脾臓を4時間培養した時、0.0001、0.01および 0.1 mg/kg で濃度依存性が観察された(Fig. 5B)。

NOとTNF-α産生

 in vitroの免疫反応の指標としてマクロファージ活性をNOとTNF-αの産生を測定した。

RAW 細胞において、RAP99(0.03、0.1、0.3、1、3、10 μg/mL)

Fig. 5

Effect of RAP99 on the NK cell activity in mice

NK cell cytotoxic activity was assessed by Cr release assay using [51Cr]- labeled YAC-1 (target ) murine lymphoma cell line.  (A) Splenocytes from six mice treated with RAP99 (0.1 mg/kg, i.v.), 24 hr before the assay were incubated with 51Cr-labeled YAC-1 cells(2.0 x104cells/well) at the target/ effector ratios (1:10, 1:20, 1:50 or 1:1000).  (B) Splenocytes from six mice treated i.v. with RAP99 (0.0001, 0.01 or 0.1 mg/kg), 24 hr before the assay were incubated with 51Cr-labeled YAC-1 cells at the target/effector ratio (1:50). After 4 hr of incubation, supernatants were harvested, and 51Cr release was measured using a gamma counter. Control mice received only the saline.  Each data point represents the mean±S.E. of cytotoxicity percent (test cpm – spontaneous cpm/maximal cpm – spontaneous cpm) x 100 of three replicate determinations per treatment in each experimental group from a representative experiment.  *p<0.05 vs. corresponding control group.

を添加して24時間培養した時、高用量のRAP99(3および10μg/mL)で用量に依存したNO産生が観察された(Fig. 6A)。RAW 細胞において、RAP99を添加して24時間培養した時、用量に依存した殺細胞作用が観察された。しかしながら、非マクロファージ細胞HL-60あるいはH2O2耐性HP100-1細胞においては、殺細胞作用は観察されなかった。

RAW 細胞において、RAP99(0.001, 0.003, 0.01, 0.03, 0.1, 0.3あるいは 1μg/mL) を添加して24時間培養した時、用量に依存した。

Effects of RAP99 on macrophage function in RAW 264.7 cells

RAW 264.7 cells were incubated with the indicated concentrations of RAP99 for 24 hr. Control cells were incubated with vehicle alone. The culture supernatants were subsequently isolated and analyzed for NO production and TNF-α expression.  (A) NO was determined using the Griess reagent. The supernatant (100 μL) was incubated with 100 μL of Griess reagent (0.1% napthalethylenediamine dihydro- chloride, 1% sufanilamine and 2.5% H3PO4) at room temperature for 10 min, and the absorbance at 540 nm was measured using a microplate reader.  The concentration of nitrite was converted into sodium nitrite concentration as a standard. (B) TNF-α was determined using a TNF-α enzyme-linked immuno- sorbent assay kit according to the manufacturer’s instructions. Each data point represents the mean±S.E. of tripricate determinations. *p<0.05 vs. control group.

 TNF-α産生が観察された(Fig. 6B)。

Fig. 6

考 察

戸田らにより開発された光合成細菌RAP99とその代謝産生物質は、動植物の細菌性疾患に有効であることが報告されている。現在臨床で使われている多くの制がん薬は、抗菌作用を有すること、さらに食用試験により癌疾患に対する有効性も報告されていることから、マウスを用いてRAP99の経口投与による細胞増殖抑制作用の有無を、細胞増殖が遅いS-180固型と細胞増殖が早い腹水癌を用いて行った。まず、固型腫瘍を用いて、S-180 癌細胞の接種前あるいは接種後にRAP99 を投与して検討した。S-180 癌細胞の接種前にRAP99 (0.5、1、5あるいは10 mg/kg)を隔日3回経口投与して、最終投与2日後にS-180 癌細胞接種群では、投与した用量に依存した癌細胞増殖抑制作用が観察された(Fig. 1)。さらに、RAP99 (0.1、0.5、1、5あるいは10 mg/kg)をS-180 癌細胞の接種後に1日1回10日間経口投与し、3回繰り返し行った実験においても、ほぼ用量に依存した癌細胞増殖抑制作用が観察された(Fig. 2)。S-180 癌細胞の接種後のRAP99投与による癌細胞増殖抑制作用は、制がん薬MMCあるいは5-FUとの併用により増強効果が観察された(Fig. 3)。S-180固型腫瘍細胞において、RAP99は癌細胞接種前あるいは接種後いずれの投与においても癌細胞増殖抑制作用が観察され、RAP99は癌細胞接種前においても認められることから、その作用の一部には宿主介在性(免疫反応)による抗腫瘍作用が示唆された。さらに、RAP99は制がん薬(MMCあるいは5-FU)の癌細胞増殖抑制作用を増大させることが明らかとなった。

次に、腹水型腫瘍細胞を用いて検討した。RAP99 (0.1、1あるいは10 mg/kg) をS-180 癌細胞の接種後に1日1回5日間経口投与した実験においては、マウスの生存日数あるいは生存匹数を指標とした癌細胞増殖抑制作用は認められなかった。しかしながら、RAP99は制がん薬(MMCあるいは5-FU)との併用により、制がん薬の癌細胞増殖抑制作用を増大させることが認められた(Fig. 4)。In vitroにおいて、S-180あるいはヒト白血病細胞HL-60細胞に、RAP99 (1 mg/mL) を添加し、24時間培養しても殺細胞作用は観察されなかった。あるいはS-180細胞とRAP99 (1mg/mL)を24時間混合培養して、マウス腹腔内に接種しても、細胞増殖抑制作用は認められなかった。RAP99の癌細胞に対する直接的な殺細胞作用の可能性を否定するものであり、先のRAP99の宿主介在性(免疫反応)の癌細胞増殖抑制作用とする仮説を支持するものであった。

 In vivoでRAP99前処置により細胞増殖抑制作用が認められたこと、さらにマクロファージ活性阻害薬2-chloroadenosine(Schultz et al., 1986)あるいはT細胞阻害薬cyclosporine A (TenHagen et al., 1998)の前処置によるRAP99 の腫瘍増殖抑制作用が弱められたことから宿主介在性(免疫反応)の抗腫瘍作用が強く示唆された。その作用機序を検討するために、腫瘍免疫に関与するNK活性あるいはマクロファージ活性に対する影響を検討した。マウスにRAP99を投与することにより、NK活性の増大が観察され、ターゲット細胞のYAC-1細胞とエフェクター細胞の脾臓の比率1:50においてRAP99の用量依存性が観察された(Fig. 5A)。

RAP99によるマクロファージ活性化の有無をマウスマクロファージ細胞RAW764.7を用い、活性化によるNOとTNF-αの遊離を指標として検討した。RAP99は用量に依存したNOとTNF-αの遊離が認められ、特にTNF-αの遊離作用は著明で低濃度のRAP99存在下でも観察された(Fig. 6A, B)。

RAP99と同様に、免疫反応あるいはサイトカインを介した宿主介在性の抗腫瘍作用を有する免疫調整物質の多くが糖タンパク質(Tsuchiya et al., 1989; Sakagami et al., 1991; Popova et al., 1993; Sasaki et al., 1993; Wang et al., 1996; Noda et al., 1996; Maeda et al., 1998; Kim et al., 2004; Gao et al., 2005) であり、さらに宿主介在性の抗腫瘍作用を有する多くの化合物が、制がん薬との併用により増強効果を有することが報告されている(Cabanes et al., 1999; Shin et al., 2004; Hernandez-Illizaliturri et al., 2005; Xian et al., 2005; Senthilnathan et al., 2006)。RAP99の腫瘍増殖抑制作用が、免疫反応あるいはサイトカインを介した宿主介在性の抗腫瘍作用を有することが見出されたことから、RAP99による制がん薬の腫瘍増殖抑制効果の増大は、殺癌細胞作用の作用点の異なるRAP99と制がん薬の併用による相乗効果に起因することが示唆された。

 In vivoでRAP99の経口投与による腫瘍増殖抑制作用は、腫瘍増殖の遅い固型癌で観察されたが、腫瘍増殖の早い腹水型癌では認められなかった。しかしながら、腹水癌において、MMCあるいは5-FUとの併用による、制がん薬の腫瘍増殖抑制作用を増強することが観察された。代替医療素材としてのRAP99は、安全性が高く(戸田ら 2006)、経口服用による癌化学療法との併用効果が期待される。今後さらなる詳細な検討が必要である。

引用文献

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