15.光合成細菌RAP99のアミロイドβ貪食亢進試験 | 専門家向け

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<ミクログリア細胞(C8-B4)のアミロイドβペプチドの貪食亢進効果の評価試験>

試験実施者:自然免疫応用技研株式会社

【目的】

RAP99熱水抽出物と光合成細菌RAP99由来LPS(以下RAP99-LPS)における、ミクログリア細胞(C8-B4)のアミロイドβペプチドの貪食亢進活性を明らかにする。

【試験の概要】

試験の方法については、Michaudらの論文1)およびPickfordらの論文2)を参考とした。マウス小脳ミクログリア細胞株C8-B4細胞、RAP99熱水抽出物、RAP99-LPS試料を細胞培養液に添加して一定時間培養(~24時間)した後、蛍光色素HilyteTM Fluor 488で標識したヒトのアミロイドβ(1-42)を貪食させた。陽性対照として大腸菌由来のLPS、MPLAを使用した。

蛍光標識したヒトのアミロイドβ(1-42)を貪食したC8-B4細胞は蛍光色を呈するので、培養終了後、フローサイトメーターでC8-B4細胞の蛍光強度を測定した。そして、C8B4細胞全数のうち、アミロイドβ1-42を取り込んで蛍光色を呈した細胞の割合を貪食率として算出した。

【試料と方法】

(1)被験物質

①RAP99熱水抽出物の調製

RAP99を1.5mLのチューブに測りとり、サンプル20mg に対し、1mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーでよく攪拌したのち、ヒートブロック上(100℃)で20分間抽出を行った。抽出後、15000×gで10分間遠心分離を行い、上澄みをサンプル(20mg/mL)として使用した。

②RAP99-LPS

RAP99-LPSは注射用水(日本薬局方、株式会社大塚製薬工場)に2mg/mLになるように溶解し4℃で保存しているものを、使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後、990μLの培養液に10μLを加えよく混ぜ、20μg/mLの溶液を調製した。以降作製した溶液100μLを900μLの培養液に加える操作を繰り返し、10倍の希釈系列を作製した。

(2)ミクログリア細胞株の調整と対照物質

①ミクログリア細胞株C8-B4

マウスのミクログリア細胞株C8-B4(ATCC No.CRL-2540)はATCCより凍結細胞を購入し、培養したものを用いた。当該細胞株C8-B4は、アミロイドβペプチドの貪食試験において、一般的に使用されている細胞株であることから選択した。ATCCより入手した凍結細胞の解凍および継代培養は細胞に添付の説明書に従って、後述のように実施した。

②C8-B4細胞の前培養

C8-B4細胞の凍結保存細胞を解凍し、週に1回の割合で新鮮な培地を用いて継代培養を行い、試験に供した。培地には、10%牛胎児血清(FBS、Moregate Biotech社)、100U/mLペニシリン(Invitrogen社)、及び100μg/mLストレプトマイシン(Invitrogen社)含有D-MEM(和光純薬工業株式会社)を用いた。

試験に使用する4日前にT75培養フラスコ当たり0.5×105cells/mL×20mLの割合で、試験に必要な細胞数に対応したT75培養フラスコ数で、C8-B4細胞を継代培養した。試験前日に、新鮮な培地への交換を行った。

試験当日、後述の通り90%以上の生存率を示し、且つ試験に必要な細胞数が得られたので試験を実施した。

③血液計算板による細胞数および生存率測定

トリパンブルー(和光純薬工業)250mgを、電子天秤を用いて秤量し、PBS(-)(和光純薬工業)を加え、C8-B4細胞染色用の0.5%(w/v)トリパンブルーPBS(-)溶液50mLを作成した。

細胞懸濁液の一部(100μL)を細胞数計測用に別の1.7mLプラスチックチューブに移した。細胞懸濁液20μLと等量(20μL)の0.5%(w/v)トリパンブルーPBS(-)溶液を混ぜ、血液計算板を用いて生細胞数および死細胞数を計測した。

細胞生存率(生細胞数/(生細胞数+死細胞数)×100)が90%以上の場合で、試験に必要な細胞数を満たしていたので試験に用いた。

(3)対照物質

①陰性対照物質

ミクログリア細胞株C8-B4を継代培養する際に用いた培養液を陰性対照とした。

②陽性対照物質

大腸菌R515株由来のモノホスホリルリピドA(以下、MPLAと表記)の原液を陽性対照物質として試験に用いた。MPLAについては、次の試薬を用いた。

MPLA from E.coli R515 (Re) TLRpureTM Sterile solution(Cat No.:IAX-100-003 lot. No.:B100613-100003 Date:10-June-2013 AdipoGen社)

(4)貪食活性試験

マウスC8-B4細胞を、2.5×105 cells/0.5mLの割合で24穴プレートの各ウェルに加えた後、各検体を含む2倍濃度の培養液を0.5mL加えた。37℃の5%CO2インキュベーター中で18時間前培養した。

ヒトのアミロイドβ(1-42)試料としては、AnaSpec社製の蛍光標識されたHiLyteTM Fluor 488アミロイドβ(1-42)を用いた。C8-B4細胞の前培養終了時に培養液を除き、Hilyte Fluor488アミロイドβ(1-42)を終濃度1μg/mL含有する培養液を添加し、3時間培養した。

培養後、アスピレーターを用いて上清を除き、ウェルに37℃に加温したPBS(-)を0.5mL加えて細胞を洗浄した。液はアスピレーターで除き、細胞に0.25%トリプシン、0.53mM EDTA含有PBS(-)を500μL加え、37℃にて10分間インキュベートした。

その後、血清を含む培養液を500μL加えてトリプシンの働きを止め、細胞を懸濁した後、1.5mLプラスチックチューブに移して1000rpmで5分間、遠心分離を行い、上清を、アスピレーターを用いて除いた。細胞の沈殿にPBS(-)を1mL加えて懸濁し、再度1000rpmで5分間、遠心分離を行った後、上清をアスピレーターで除いた。

細胞の沈殿に1%BSA、PBS(-)500μLを加えて細胞を懸濁し、フローサイトメーターを用いて貪食率を測定した。

(5)試験系の成立条件

試験の成立条件として、陽性対照として用いるMPLAのアミロイドβの貪食亢進が認められたので、成立条件を満たしていると判断した。

【結果と考察】

(1)結果

培養液のみの陰性対照群に比べて、MPLA 1μg/mL添加群では、有意に高いHilyte Fluor488 アミロイドβ(1-42)の貪食が認められた(図1、表1)。

検体のRAP99熱水抽出物群では、用量依存的な貪食率の上昇が認められた。10μg/mLと100μg/mLの群では有意に高い値を示した。RAP99-LPSでは、0.1μg/mL、1μg/mLおよび10μg/mLの測定した3段階の用量のいずれにおいても有意に高い貪食率が認められた。なお、蛍光強度の中央値においても貪食率と同様の傾向が認められた。

以上の結果より、RAP99熱水抽出物およびRAP99-LPSはin vitroの試験において、ミクログリア細胞に働き、アミロイドβ(1-42)の貪食活性を高める効果を示すことが明らかになった。

表1. 各被験物質におけるアミロイドβ貪食率


蛍光強度101以上の細胞が占める割合
n=4の平均値と標準偏差


図1 各被験物質におけるアミロイドβの貪食率

(2)考察

アルツハイマー病では、アミロイドβの脳内の増加が特徴として認められる。アルツハイマー病の予防として、アミロイドβの増加を防ぐ方法が求められており、アミロイドβの産生抑制とアミロイドβの脳内からの除去に関して研究が進められている。

アミロイドβの除去に関しては、脳内に存在するマクロファージ系細胞であるミクログリア細胞が、貪食によってアミロイドβを細胞内に取り込んで処理していることは報告されており、ミクログリア細胞のアミロイドβの貪食活性を高める方法が求められている。近年、菌体成分を用いてミクログリア細胞を活性化し、アミロイドβの貪食能を高めること、さらに病態の改善を示すことが報告された2)

貪食を高めるメカニズムについては本試験では検討していないが、Pickfordらの報告2)では、貪食に際して、細胞をサイトカラシンDで前処理することでアミロイドβの貪食が抑制されることが述べられており、マクロピノサイトーシス による可能性が示唆されている。

また、別に、アミロイドβがミクログリア細胞の細胞表面上のTLRに結合するとの報告、あるいはミクログリアで、TLR2、TLR4またはCD14を欠損したものではアミロイドβにより活性化せず、貪食亢進が認められないとの報告事例がある。

さらに、トランスジェニックADマウスでTLR4を欠損しているものでは、アミロイドβの拡散と繊維状アミロイドβの上昇が認められるとの報告があり、貪食の活性化とアミロイドβの貪食にTLRが関与していることが示されている。TLRとは別に、アミロイドβの貪食にスカベンジャーレセプター、例えば、SR-AがADや高齢マウスで変化しているとの報告もある。

RAP99熱水抽出物およびRAP99-LPSのアミロイドβの貪食促進に関するメカニズムとしては、上記のTLRおよびSR-Aが働いている可能性が推定される。

【文献】

1) Michaud, JP. et al., Toll-like receptor 4 stimulation with the detoxified ligand monophosphoryl lipid A improves Alzheimer’s disease-related pathology, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 110 (2013),1941-1946.

2) Pickford, F. et al., Progranulin Is a Chemoattractant for Microglia and Stimulates Their Endocytic Activity, Am. J. Pathol. 178 (2011), 284-295.

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