16.光合成細菌 RAP99 の炎症性メディエーターに関する抗炎症試験-専門

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<光合成細菌RAP99含有成分による炎症性メディエーターNO(一酸化窒素)及びTNF-αに対する産生抑制試験>

試験責任者:自然免疫応用技研株式会社

【目的】

炎症メディエーターである一酸化窒素(NO)とTNF-αを指標として調べることにより、光合成細菌RAP99菌体(以下RAP99)および光合成細菌RAP99由来LPS(以下RAP99-LPS)の抗炎症作用を評価する。

【試料と方法】

1.RAP99関連試料の作製

(1)RAP99-LPS

RAP99-LPSは注射用水(日本薬局方、株式会社大塚製薬工場)に2mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを、使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後のRAP99-LPS原液10μLに、次項2(2)で後述するRAW264.7細胞の培養液990μLを加えよく混ぜ、20μg/mLの溶液を調製した。以降作製した溶液100μLを900μLの培養液に加える操作を繰り返し、10倍の希釈系列を作製した。

 

(2)RAP99熱水抽出物

RAP99の凍結乾燥粉体20mgを1.5mLのチューブに測りとり、1mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーでよく攪拌したのち、ヒートブロック上(100℃)で20分間抽出を行った。抽出後、15000×gで10分間遠心分離を行い、上澄みをサンプル(20mg/mL)として使用した。

 

(3)RAP99加水抽出物

RAP99の凍結乾燥粉体20mgを1.5mLのチューブに測りとり、1mLの蒸留水を加え、酸およびアルカリ処理を施したエンドトキシンフリーの無菌ガラスビーズを加え、ボルテックスミキサーで10分攪拌した。抽出後、15000×gで10分間遠心分離を行い、上澄みをサンプル(20mg/ml)として使用した。

 

2.マクロファージ細胞株

(1)RAW264.7細胞株

マウスマクロファージRAW264.7細胞株(No.TIB-71)はATCCより購入したものを用いた。当該細胞株は種々のマクロファージ活性化物質に対する感受性が高く、マクロファージ活性化能の試験に最も一般的に使用されている細胞株の一つである。

 

(2)培養液の調製

RAW264.7細胞の培養液を、RPMI1640培地(和光純薬工業):500mLに牛胎児血清(ハナ・ネスコバイオ)55.5mL、硫酸カナマイシン(ストレプトマイシン)0.11mL、アンピシリンナトリウム(ペニシリン)0.134mLを加えて調製した。調製した培養液は4℃にて保存した。

 

(3)細胞株の保存及び準備

入手した細胞は37℃に加温した液で急速解凍した。解凍した液を直ちに、新鮮な培養液を10mL加えた15mLコニカルチューブに移し、1000rpm(190×g)で5分間遠心分離を行なった後、デカント(容器を静かに傾ける操作)により上清を静かに廃棄した。

沈殿した細胞に、前項(2)で作製した培養液10mLを加え静かに懸濁し、液をT25培養フラスコに移した。T25培養フラスコを37℃の5%CO2インキュベーターで培養した。細胞が1×106cells/mL程度になった時点で、ピペッティングにより、壁に付着している細胞を剥がし、得られた細胞懸濁液の一部を用いて細胞数と生存率を計測した。

残りの細胞懸濁液を15mLコニカルチューブに移し、1000rpmで5分間遠心分離を行い、上清をデカントにより廃棄した。細胞の沈殿をタッピングにより分散させた後、凍結保存用のセルバンカーを1×106cells/mLになるように加えて静かに懸濁し、1.0mLずつをセラムチューブに移した。細胞を入れたセラムチューブは予め冷蔵しておいたバイセルに入れ、-80℃で凍結保存した。凍結保存した細胞を戻したものを試験に供した。

 

3.対照物質

(1)陰性対照物質

前項2(2)で作成した培養液を陰性対照物質とした。

 

(2)陽性対照物質

グラム陰性菌の一種で小麦やサツマイモなどの植物の共生菌として知られるパントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)より精製したLPS(以下LPSpと略記)を、陽性対照物質とした。用量は10000ng/mL、1000ng/mL、100 ng/mL、10 ng/mL、1 ng/mL、0.1 ng/mLおよび0.01ng/mLとした。

 

(3)陽性対照の調製方法

希釈操作は全てクリーンベンチ内にて実施した。LPSpは注射用水に2.5mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを、使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後、992μLの培養液に8μLを加えよく混ぜ、20μg/mLの溶液を調製した。以降作製した溶液100μLを900μLの培養液に加える操作を繰り返し、10倍の希釈系列を作製した。

 

4.細胞の生存率判定に用いる試薬の調製

(1)PBS(-)溶液

PBS(-)(シグマアルドリッチ)100mLに蒸留水を加えて1Lにした。121℃にて20分間、高圧蒸気滅菌を行い室温で保存した。

 

(2) 0.5%(w/v)トリパンブルーPBS(-)溶液

トリパンブルー(和光純薬工業)250mgにPBS(-)を加え50mlにした。この液5mlずつを15mLコニカルチューブに分注し、室温にて保存した。

 

5.NOアッセイ用試薬調製

Griess試薬については、3%(w/v) スルファニルアミド(シグマアルドリッチ)を含む7.5%リン酸(ナカライテスク)水溶液(I液)と、0.15%(w/v)ナフチルエチレンジアミン(ナカライテスク)水溶液(II液)をそれぞれ調製し、4℃にて保存した。試験時にはI液1に対してII液を2の割合で混合して用時調製した。

 

6.試験の流れ

試験の流れを図1に示す。RAW264.7細胞を、試験液で24時間前処理した後で培地を除いた。その後、無添加の培地、もしくはLPSpを添加した培地を加えて、さらに24時間培養を行い、培地中のNO産生量およびTNF量を測定した。これにより、RAW264.7細胞をRAP99で予め処理した後のLPSpによる炎症誘導能への影響を確認することができる。

図1試験の流れ

図1 試験の流れ

 

7.RAW264.7細胞の前培養

RAW264.7細胞は、10%の牛胎児血清、100μg/mLペニシリン、ストレプトマイシンを含有するRPMI1640培地にて継代培養したものを用いた。培養はT25培養フラスコを用い、3日あるいは4日毎に0.5~1×105cells/mLで植え継いだ。37℃の5%CO2インキュベーター内で培養した。

 

8.共通部分の試験操作

試験操作は全てクリーンベンチ内で行った。

 

(1)T75培養フラスコ4本にて前培養したRAW264.7細胞をピペッティングにより壁から剥がし、得られた細胞の懸濁液を50mLコニカルチューブに移した。チューブを室温で1000rpm(190×g)、5分間遠心分離を行い、上清をデカントで捨て、細胞をペレットとして回収した。

 

(2)タッピングにより細胞をほぐした後、細胞ペレットに培養液5mLを加え、ピペッティングによって細胞を均一に懸濁した後、11μLを別のチューブに移し0.5%トリパンブルーを添加した後、血液計算板に液を移して細胞数と生存率を測定した。

生存率(トリパンブルーで核が染色されない細胞を生細胞、核が青く染色される細胞を死細胞として、生細胞/(生細胞数+死細胞数)×100を算出)が、90%以上(94%)であったので、残液を試験に用いた。

 

(3)測定した細胞数に基づいて、残液に培養液を加えて細胞数が4×105cells/mLになるよう調製した。得られた細胞懸濁液を100μLずつ96well平底プレート4枚の各ウェルに加え37℃の5%CO2インキュベーターで、細胞がウェルの底に接着して伸展するまで2時間前培養を行った。

 

(4)被験液は、終濃度の2倍濃度のものを調製した。具体的には、熱水抽出サンプルおよび水抽出サンプルは200μg/mL、20μg/mL、6μg/mL、2μg/mLおよび 0.6μg/mLの計5段階の用量を作製し、予めRAW 264.7細胞(4×105cells/mL)100μLを播種してあるウェルに100μLずつ加えた。

LPSpおよびRAP99-LPSの群では、培地に添加した際10μg/mL、1μg/mL、100 ng/mL、10 ng/mL、1 ng/mLおよび0.1 ng/mLとなるように調製した。各検体を添加後、24時間培養し、培養上清150μLを回収した。

 

(5)上清を回収したのち、被検物質を含まない培地を200μL加え1000rpm(190×g)で5分間遠心分離を行った。上清200μLを取り除く作業を2回繰り返し、被験液を希釈したのち、LPSp無添加の培地もしくはLPSp 1.33ng/mLを含む培地を150μL加え、CO2インキュベーター中で24時間インキュベートを行った。

 

(6)各ウェルから培養上清50μLを96穴平底プレートに移しNO測定およびTNF-α測定に用いた。測定方法は次項に記載する。

 

9.NO産生量の測定

(1)検量線用スタンダードの調製

200μMの亜硝酸ナトリウム水溶液を以下の割合で混合し、亜硝酸塩(以下NO2と表記)の標準液を調製して検量線を作成した。

 

(2)検量線用NO2標準溶液を各50μlずつ、対応するウェルに加えた。

 

(3)Griess試薬の調製

前述したように、3%スルファニルアミド7.5%リン酸水溶液と0.15%ナフチルエチレンジアミン液を1:2の比率で用時調製した。

 

(4)調製したGriess試薬を各ウェル当たり50μLずつ加え10分間室温でインキュベートした後、主波長550nm、副波長668nmの吸光度を測定した。

 

(5)各吸光度値より算出されたNO2値より、陰性対照と陽性対照の値を比較して、陽性対照が陰性対照の2倍以上の値であることを確認した。

 

10.TNF-α ELISA測定

Biolgend mouse TNF-α測定キットの取扱説明書に従った。サンプルは40倍希釈で測定を行った。

 

11.試験系の成立条件

(1)NO測定

試験の成立条件として、陽性対照のGriessの方法によって測定したNO2量が、陰性対照値のそれに比較して有意に高い値を示すこと、および雑菌の混入などの異常が認められなかったため、試験が適切に実施されたものと判断した。

 

(2)TNF-α測定

培地のみを加え24時間処理を行ったのち、LPSpを含まない培地で処理した試験群でTNF-αの産生がほぼ認められず、かつ、LPSpを含む培地の試験群でTNF-αが産生していた場合、問題なく試験が行われたと判断した。本試験ではこの条件を満たしており、試験は適切に行われたと考えられた。

 

【結果と考察】

1.NO産生

(1)結果の図示

RAP99菌体粉末およびRAP99-LPSで前処理した後に、LPSpを培養液に加えた際のRAW264.7細胞のNO産生に対する影響について調べた。結果を図2~5に示した。

前処理として培養液のみ(0ng/mL)を用い、24時間後にLPSpを加えた試験群が産生したNO2量(NO産生の指標として培養液中でNOの安定な代謝物であるNO2を測定)を100%として、他の群と比較を行なった。

 

図2 LPSp処理群のNO産生量

図2 LPSp処理群のNO産生量

 

 

図3 RAP99-LPS処理群のNO産生量

図3 RAP99-LPS処理群のNO産生量

 

 

図4 RAP99熱水抽出物処理群のNO産生量

 

図5 RAP99加水抽出物処理群のNO産生量

図5 RAP99加水抽出物処理群のNO産生量

 

(2)陽性対照LPSpの結果

陽性対照に用いたLPSpで前処理した試験群では、10ng/mL~10,000ng/mLの範囲で用量依存的なNO2産生量の上昇が認められた。

 

(3)RAP99関連被験物質の結果

RAP99-LPS では0.01ng/mL~10ng/mLまでの範囲におけるNO2産生量は、陰性対照(RAP99-LPS 0ng/mL)とほぼ同様な傾向を示した。しかし、10ng/mL~10000ng/mLの範囲では、陽性対照(LPSp)と同様な用量依存的なNO2産生量の上昇は認められず、著明な産生抑制傾向が認められた。

RAP99熱水抽出試料では、0.1~0.3µg/mLにおけるNO2産生量の上昇傾向は認められなかったが、3μg/mL以上では、著明に高いNO2産生量を示した。

RAP99加水抽出試料では、0.1~1µg/mLまではNO2産生量の上昇傾向は認められなかったが、3µg/mL以上では著明に高いNO2産生量を示した。

以上のNO産生を指標とした抗炎症効果試験より、RAP99-LPSでは高いNO2産生量抑制効果を示すことが認められた。RAP99菌体試料からの抽出物では、今回の測定条件ではNO2産生量の有意な抑制効果は認められなかった。

 

(4)RAP99-LPSとRAP99抽出物との比較

RAP99-LPSとRAP99抽出物との傾向について比較すると、RAP99抽出物の中に含まれるLPS濃度がわかると、抽出物とLPS単独の場合の比較から有効な情報を得られる可能性が高いと考えられる。

RAP99-LPSでは、100ng/mLにおいて、有意なNO2値の低下が認められているのに対して、熱水抽出液の1µg/mL群では、抑制は認められないことにより、LPS以外の成分の影響がより強く出ているものと推定される。

可能性がある成分としては、LPS以外のTLRリガンドが考えられる。たとえば、TLR9と3のリガンドである核酸(DNA、RNA)、TLR5のリガンドである鞭毛の構成成分であるフラジェリンというタンパク質、TLR2のリガンドであるペプチドグリカンなどが挙げられる。

 

 

2.TNF-α産生

(1)結果の図示

RAW264.7細胞のTNF-αの産生量(pg/mL)を図6~9に示した。

図6 LPSp処理群のTNF-α産生量

 

図7 RAP99-LPS処理群のTNF-α産生量

図7 RAP99-LPS処理群のTNF-α産生量

 

図8 RAP99熱水抽出物処理群のTNF-α産生量

図8 RAP99熱水抽出物処理群のTNF-α産生量

 

図9 RAP99加水抽出物処理群のTNF-α産生量

図9 RAP99加水抽出物処理群のTNF-α産生量

 

(2)陽性対照LPSp

0.01~100ng/mLでは用量依存的に、TNF-αの産生量が減少したが、1000~10000ng/mLでは上昇に転じた。

 

(3)RAP99-LPS

RAP99-LPSでは、10ng/mL以上でTNF-αの産生を用量依存的に有意に抑える結果となった。また、LPSpに対しRAP99-LPSは、TNF-αの産生を低下させ始める用量が高い、すなわち他のサンプルに比べ抗炎症効果が現れる用量が高いことが示唆された。

また、0ng/mLのときの産生量と比較すると、LPSpにおいては100ng/mLにおいて最大40%程度までの抑制が認められたが、RAP99-LPSでは10000ng/mLにおいて10%程度まで抑制しており、より高いTNF-α産生量抑制効果が示唆された。

 

(4) RAP99抽出物

RAP99熱水抽出物およびRAP99加水抽出物においても、TNF-αの産生量抑制による抗炎症作用があることが示唆された。0.3µg/mLの熱水抽出物と1µg/mLの加水抽出物のNO産生量はほぼ同等に抑制されていることから、RAP99熱水抽出物の方が加水抽出物に比べて、抗炎症効果を高める成分が高濃度に抽出されていることが示唆された。

その要因として、一般的にLPSは熱水により抽出されることや、RAP99-LPSが抑制効果を示していることから、RAP99熱水抽出物が、同加水抽出物に比べてRAP99-LPSをより多く含むためであると推測される。

RAP99熱水抽出では、RAP99菌体1gからの熱水抽出により、免疫機能に影響をもたらす生理活性成分としてLPS 5.6mg(Limulus測定)、核酸27.3mg、タンパク質51.2mgが得られたことがある。これらの合計収量が81.4mgであることを考慮すると、熱水抽出物における生理活性成分の実際の添加量は、その約1/10となる。つまり、RAP99熱水抽出液0.3µg/mLで処理した場合、熱水抽出物の生理活性成分の添加量は約0.03µg/mLと推定される。

 

(4)RAP99-LPSとRAP99抽出物との比較

RAP99-LPSとRAP99抽出物のTNF-α産生量について、0ng/mLのときの産生量と比較すると、30%の抑制率を示す用量は、RAP99-LPSでは100ng/mLであった。RAP99熱水抽出物では0.3µg/mLであり、RAP99加水抽出物では0.3~1µg/mLであった。

用量について比較すると、熱水抽出試料液中の生理活性成分の量は、前述したように、その濃度の約1割と推定できている。0.3µg/mL(300ng/mL)の場合、抽出された生理活性成分の合計量は30ng/mL程度と考えられ、30%までの抑制率ではRAP99-LPSの約1/3の量で、同程度の効果を示すことが推測される。

これらの抗炎症作用を示すメカニズムとしては、各リガンドに対するレセプターから、タンパク質の発現までの間に介在する、細胞内のシグナル伝達系の抑制が想定される。たとえば、NF-κBはこれらの経路における代表的な因子であることから、メカニズムを明らかにする際に、これら因子の動態を調べることにより重要な知見が得られると考えられる。

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