17.光合成細菌RAP99のNF-κB抑制試験 | 専門家向け

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<マウスのマクロファージ細胞由来のRAW263.7細胞に対する光合成細菌RAP99菌体および光合成細菌RAP99由来LPSのNF-κB抑制効果の評価試験>

試験責任者:自然免疫応用技研株式会社

【目的】

光合成細菌RAP99菌体(以下RAP99)および光合成細菌RAP99由来LPS(以下RAP99-LPS)のNF-κB活性化抑制効果を明らかにして、それらの抗炎症作用の根拠について考察する。

 

【試料と方法】

1.被験物質

①RAP99:Rhodobacter azotoformans BP0899株の凍結乾燥粉体試料

②RAP99-LPS:RAP99から抽出、精製したリポ多糖(LPS)。

2.被験液の調製

(1)RAP99凍結乾燥菌体粉末熱水抽出物(以下RAP99熱水抽出物)

RAP99凍結乾菌体粉末を1.5mLのチューブに測りとり、20mg に対し1mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーでよく攪拌した。その後、ヒートブロック上で、100℃で20分間抽出を行った。抽出後、15000gで10分間遠心分離を行い、上澄みをサンプル(20mg/mL)として使用した。

(2)RAP99-LPS

RAP99-LPSは注射用水(日本薬局方、株式会社大塚製薬工場)に2mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを用いた。使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後、990μLの生理食塩水に10μLを加えよく混ぜ、20μg/mLの溶液を調製した。

(3)保存条件

被験液は用時調製とし、残液は破棄した。

3.試験材料

(1)RAW264.7細胞株

マウスマクロファージRAW264.7細胞株(No.TIB-71)はATCCより購入したものを用いた。当該細胞株は種々のマクロファージ活性化物質に対する感受性が高く、マクロファージ活性化能の試験に最も一般的に使用されている細胞株の一つであり、また、NF-κB活性化の研究に一般的に使用されている細胞株であるため選択した。

(2)RAW264.7細胞株の保存及び解凍

入手した細胞は37℃に加温した液で急速に解凍した。解凍した液を、新鮮な培養液を10mL加えた15mLコニカルチューブに移し、1000rpmで5分間遠心分離を行い、上清をデカント(コニカルチューブを静かに傾ける所作)により捨てた。

細胞(沈殿)に培養液5mLを加え静かに懸濁し、液をT25培養フラスコに移した。37℃の5%CO2インキュベーターに移し培養した。細胞がコンフルエント(細胞が培養容器の接着面を覆いつくした状態)になった時点で、ピペッティングにより壁に付着している細胞を剥がし、得られた細胞懸濁液の一部を用いて細胞数と生存率を計測した。

残りの細胞懸濁液を15mLコニカルチューブに移し、1000rpmで5分間遠心分離を行い、上清をデカントにより捨てた。細胞(沈殿)をタッピングにより崩し、細胞を分散させた後、凍結保存用のセルバンカーを1×106cells/mlになるように加え、静かに懸濁し、1.0mlずつをセラムチューブに移した。細胞を入れたセラムチューブは予め冷却しておいたバイセルに入れ、-80℃で凍結保存した。凍結保存した細胞を戻し継代培養中の細胞を本試験に用いた。

4.対照物質

(1)陰性対照物質

被験物質の溶解に用いた生理食塩水を陰性対照物質とした。

(2)陽性対照物質

小麦やサツマイモなどの植物との共生で知られるグラム陰性菌パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)より精製したLPS(以下、LPSpと略記)を陽性対照物質とした。用量は100ng/mLとした。なお、参考として1μg/mLおよび0.01μg/mLの用量でも実施した。

(3)調製方法

LPSpは注射用水に2.00mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを用いた。使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行なった。溶液10μLを990μLの新鮮な培養液に加え、よく攪拌し、20μg/mLのLPSp溶液を調製し、その後さらに培養液で希釈して終濃度の100倍希釈液を調製して試験に用いた。

5.試薬調製

(1)培養液の調製

10%FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン含有RPMI1640 をクリーンベンチ内で以下の割合で各試薬を混合し、作製した(4℃にて保存)。

RPMI1640 培地:500 mL

非働化FBS:55.5 mL

ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×):液体 5.6mL

※非働化FBS:FBS(牛胎児血清)を56℃で30分間加熱処理し、分注して-20℃にて保存したものを使用した。非働化とは血清の補体成分を失活させる操作。

(2)PBS(-)溶液

PBS(-)9.6gを電子天秤を用いて秤量し、蒸留水を加えて1Lとした。121℃にて20分間、高圧蒸気滅菌を行い室温で保存してあるものを用いた。

(3)0.5%(w/v)トリパンブルーPBS(-)溶液

トリパンブルー250mgを、電子天秤を用いて秤量し、PBS(-)を加え50mLとした。液は、5mLずつに15mLコニカルチューブに分注し室温にて保存してあるものを用いた。

6.試験方法

(1)概略および操作

①RAW264.7細胞の前培養

RAW264.7細胞は、5-(1)項で調製した培地にて継代培養したものを用いた。培養はT25培養フラスコを用い、3日ないし4日毎に0.5~1×105cells/mLで植え継いた。試験用にT75培養フラスコ4枚に細胞を播種し、37℃の5%CO2 インキュベーター内で培養した。

②検体処理細胞抽出液の調製

RAW264.7細胞は、T75培養フラスコで培養し、4本を試験に用いた。細胞をピペッティングにより剥がし、50mLコニカルチューブに回収した。遠心分離(1000rpm、5分間)を行い、細胞を沈殿として回収し、タッピングにより細胞を分散させた。培養液を10mL加えよく混ぜ、再度遠心分離(1000rpm、5分間)を行い、細胞を回収した。細胞に培養液を10mL加え、ピペッティングにより細胞を分散・懸濁させてから、一部をサンプリングして細胞数と生存率を測定した。

細胞を1.067×106cells/mLに培養液を加えて希釈し、6穴プレートの1ウェル当たり3.0mLずつ加えた(3.2×106cells/3mL/ウェル)。37℃、5% CO2インキュベーターで、2時間インキュベートし、細胞をウェルの壁に付着させた。2時間後、100倍濃度の各サンプルを1ウェルあたり30μLずつ加えた。

各サンプルが入った培養液を添加後、37℃、5% CO2インキュベーターで、24時間インキュベートした後、培養液を15mLチューブに回収した。培養液を回収した後のウェルに37℃で加温した新鮮な培養液を1mL加えてウェル全体に行き渡らせた後、この培養液も同じチューブに回収した。再度、1mLの培養液をウェルに加えて同様に培養液を回収した。その後、ウェルに加温した培養液を1mL加えた。

培養液を遠心分離(1000rpm、3分間)し、上清をデカント(容器を静かに傾ける操作)によって捨てた後、新鮮な培養液を3mL加えて細胞を懸濁させ、再度遠心分離を行なった。その後、上清をデカントによって捨て、新鮮な培養液を2mL加えて細胞を懸濁し、もとのウェルに戻した。

細胞懸濁液に、LPSpを終濃度100ng/mLになるように、100倍濃度の10μg/mLのLPSpを含む培養液を30μL加えてよく混ぜ、30分間、37℃、5% CO2インキュベーターで、インキュベートした。その後、培養液を15mLチューブ回収して遠心分離し、培養上清をアスピレーターで除いた。氷冷したPBS液3mLを、培養液を除いたウェルに加えてピペッティングにより細胞を剥がし、細胞懸濁液を先ほどの15mLチューブに移した。

その後、1000rpm、3分間遠心分離し、上清をアスピレーターで除き、氷冷したPBS液を0.5mL加え、細胞を懸濁し、1.5mLチューブに細胞懸濁液を移した。以降の回収した細胞から核タンパクを抽出する操作は、Nuclear Extract kitに記載の方法に従った。

回収した細胞を、3000rpmで4℃、5分間マイクロ遠心分離機で遠心分離を行い、上清をアスピレーターで除き、細胞の沈殿に、氷冷した1×Hypotonic Bufferを250μl加え、ピペッティングにより懸濁した。

氷中で、15分間、インキュベートした後、洗浄液 12.5μLを加えて、ボルテックスミキサーにより10秒間 (最高の設定で)、攪拌して、30秒間 14,000×gで遠心分離した。上清 (cytoplasmic fraction) を別の氷冷した1.5mLチューブに移した (Cytosol extract、2本のチューブに分注した)。測定まで、-80℃にて保存した。

沈殿に、25μLのComplete lysis Bufferを加え、ボルテックスミキサーにより最高の設定で10秒間攪拌した後、30分間氷中でインキュベートした。その後、30秒間ボルテックスミックス(最高の設定で)し、4℃で、マイクロ遠心分離機により、12360rpm(14000×g)で、10分間遠心分離した。上清を氷冷した1.5mLチューブにピペットで移した(20μL 1本と残り~10μL程度1本)。直ちに、-80℃にて保存した。

③抽出液のタンパク定量

抽出液のタンパク定量はBradfordのCBB(クマシーブリリアントブルー)色素を用いた方法により、ウシ血清アルブミン(BSA)を標準品として用いて測定した。測定は使用したCBB Protein assay Kitの説明書に従って実施した。

Nuclear extractは、蒸留水にて100倍希釈しプレートリーダーにてO.D.570nmで測定した。

④マウスNF-κB p65の定量

NF-κBの定量には、Trans AM NF-κB p65 Kitを用いた。測定は、キット付属の説明書に従って実施した。各サンプルについてn=1で測定した。核抽出液10μlを測定に用いた。得られた吸光度値について、タンパク定量の測定値に基づいて、Nuclear extract 100μg当たりの吸光度値を算出して群間比較した。なお、キット付属のPositive controlのNuclear extractは、指定の2.5μgを用いた。Extractの希釈液のみを添加したBlankも同時に測定した。測定原理の模式図を下図に示す(出典:キット説明書)。

 

(2)本試験用量の設定

RAP99熱水抽出物およびRAP99-LPSのRAW264.7細胞におけるNO産生およびTNF産生抑制試験の試験成績を参考にして、本試験での用量を決めた。

【結果と考察】

結果を図1、表1に示した。

培養液のみで24時間前処理した後LPSp 100ng/mLにて刺激した場合に、LPSp無刺激の場合と比較して約8倍高い値を示した(0.86±0.23→7.06±0.68)。この結果により、LPS刺激によりNF-κB p65が細胞質から核内に移行したことが示唆された。

陽性対照として用いたLPSpで前処理した場合では、用量依存的にNF-κB測定値が低下した。1ng/mLと100ng/mLでは、有意な低下が認められた。RAP99-LPSでは用量依存的な低下が有意に認められた。RAP99熱水抽出物では、3000ng/mLにおいて、有意に低い値を示した。

これまでの試験結果から、RAP99-LPSまたはRAP99熱水抽出物を前処理することで、その後のLPS刺激によるNO産生とTNF-α産生の抑制効果が認められている。この度の結果より、当該抑制効果を示す作用機序として、NF-κBを含むシグナル伝達系が関与しており、NF-κBの核内への移動が抑制されていることが、TNF-α産生やNO産生の抑制に繋がっていることが示唆された。

図1. RAP99熱水抽出物とRAP99-LPSの前処理によるRAW264.7細胞のLPSp刺激による核内NF-κB上昇の抑制効果の検討
図中のカラムとバーはn=3のデータの平均と標準偏差を示す。
 図中の+と-は、前処理後のLPS刺激の有無を示す。

 

表1.RAP99熱水抽出物とRAP99-LPSの前処理によるRAW264.7細胞のLPSp刺激による核内NFκB上昇の抑制効果の検討

サンプル

用量LPSp処理O.D. ( /100μg protein)

抑制率 (%)

mean

±

SD

medium

0.860

±

0.230

+

7.057

±

0.6830.00
RAP99-LPS

1ng/mL

+

5.931

±

0.612

15.95

100ng/mL

+

5.398

±

0.372

23.51

10000ng/mL

+

2.027

±

0.206

71.27

RAP99熱水抽出物

30ng/mL

+

6.160

±

0.160

12.70

300ng/mL

+

6.852

±

1.262

2.91

3000ng/mL

+

1.330

±

0.159

81.16

LPSp

0.01ng/mL

+

6.920

±

0.094

1.94

1ng/mL

+

4.139

±

0.270

41.35

100ng/mL

+

0.498

±

0.026

92.94

図2.にLPSレセプターのTLR4からのシグナル伝達の模式図を引用する1)。RAP99熱水抽出物、RAP99-LPSについてのNF-κBの核内への移動が抑制されサイトカイン産生等が抑制されるメカニズムについては、現時点ではわからないが、シグナル伝達に係る因子に対して抑制的に働く因子が誘導されたことによる可能性が考えられる。

図2 TLR3- and TLR4-mediated signaling pathways. TLR4 activates the MyD88-dependent and the Trif-dependent pathways. TIRAP/Mal and TRAM are required for the activation of MyD88- and Trif-dependent pathways, respectively. MyD88 recruits IRAK4 and TRAF6 upon ligand stimulation. TRAF6 activates TAK1/TAB1/TAB2/TAB3 complex via K63-linked ubiquitination (Ub). Activated TAK1 complex then activates the IKK complex consisting of IKKα, IKKβ and IKKγ/Nemo, which catalyze IκBs (P). IκBs are destroyed by the proteasome pathway, allowing NF-κB to translocate into nuclei. TAK1 simultaneously activates the MAP kinase pathway, which results in phosphorylation (P) and activation of AP-1. NF-κB and AP-1 control inflammatory responses by inducing proinflammatory cytokines. TLR4 also recruits TRAM and Trif, which interacts with TBK1. TBK1 together with IKKi mediates phosphorylation of IRF3 (P). Phosphorylated IRF3 is dimerized and translocated into nucleus to bind DNA. Trif also interacts with TRAF6 and RIP1, which mediate NF-κB activation. Activation of IRF3, NF-κB and AP-1 is required for induction of type I IFN, particularly IFNβ. TLR3, which resides in endosomal vesicles, utilizes Trif but not MyD88, TIRAP/Mal and TRAM for its signaling. MAPKs, MAP kinases

【文献】

1) T Kawai & S Akira, TLR signaling, Cell Death & Differentiation 13, 816–825(2006).

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