18.光合成細菌RAP99のTLR活性試験 | 専門家向け

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<HEK293細胞を用いたTLR活性化確認試験>

試験責任者:自然免疫応用技研株式会社

【目的】

光合成細菌RAP99菌体(以下RAP99)および光合成細菌RAP99由来LPS(以下RAP99-LPS)のマクロファージ活性化の経路について、TLR2、4、9に関してそれらの遺伝子を導入したHEK293細胞を用いて明らかにする。

【試料と方法】

1.試験材料

(1)被験液の調製

①RAP99-LPS

RAP99-LPSは注射用水(日本薬局方、株式会社大塚製薬工場)に2mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを、使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後、990μLの培養液に10μLを加えよく混ぜ、20μg/mLの溶液を調製した。以降作製した溶液100μLを900μLの培養液に加える操作を繰り返し、10倍の希釈系列を作製した。

 

②RAP99熱水抽出物

RAP99凍結乾燥菌体粉末を1.5mLのチューブに測りとり、試料20mg に対し、1mLの蒸留水を加え、ボルテックスミキサーでよく攪拌したのち、ヒートブロック上(100℃)で20分間抽出を行った。抽出後、15000gで10分間遠心分離を行い、上澄みをサンプル(20mg/mL)として使用した。

 

③RAP99粉砕懸濁液

RAP99凍結乾燥菌体粉末を1.5mLのチューブに測りとり、試料20mg に対し、1mLの蒸留水を加え、酸およびアルカリ処理を施したエンドトキシンフリーの無菌ガラスビーズを加え、ボルテックスミキサーで10分攪拌・粉砕して懸濁液を調整した。本懸濁液をサンプル(20mg/mL)として使用した。

 

(2)細胞株

①TLR遺伝子導入HEK細胞株

本細胞株はヒト胎児腎細胞293(HEK293)にTLRなどのタンパク質の遺伝子を導入して形質転換させたもので、リガンドが各TLRに結合すると、その指標としてIL-8が産生されるよう設計されている。

InvivoGen社より購入したものを用いた。同社より購入したTLR遺伝子導入HEK細胞株は以下の通り。

・TLR null(TLR遺伝子の導入無し)

・TLR2   ・TLR4   ・TLR9

・TLR4/MD2/CD14(TLR4およびその共受容体であるMD2とCD14の遺伝子も導入)

なお、TLR4/MD2/CD14のみマウスの遺伝子を導入した細胞株で、他はヒトの遺伝子を導入した細胞株である。

 

②当該細胞株の選択理由

当該TLR遺伝子導入HEK細胞株は、各TLRのリガンドに対して感受性が高く、被験物のTLR活性化経路を明らかにする目的で開発、使用されている細胞株であるため。

 

③細胞株の保存及び準備

入手したTLR遺伝子導入HEK細胞株は37℃に加温した液で急速解凍した。解凍した液を直ちに、新鮮な培養液を10mL加えた15mLコニカルチューブに移し、1000rpm(190×g)で5分間遠心分離を行い、上清をデカント(容器を静かに傾ける操作)により捨てた。

細胞の沈殿に、培養液(10%FBS、100U/mLペニシリン、100U/mLストレプトマイシン、DMEM)10mLを加え静かに懸濁し、液をT25培養フラスコに移した。T25培養フラスコを37℃の5%CO2インキュベーターで培養した。

細胞が1×106cells/mL程度になった時点で、ピペッティングにより壁に付着している細胞を剥がし、得られた細胞懸濁液の一部を用いて細胞数と生存率を計測した。

残りの細胞懸濁液を15mLコニカルチューブに移し、1000rpmで5分間遠心分離を行い、上清をデカントにより捨てた。細胞の沈殿をタッピングにより分散させた後、凍結保存用のセルバンカーを1×106cells/mLになるように加え、静かに懸濁し、1.0mLずつをセラムチューブに移した。

細胞を入れたセラムチューブは予め冷蔵しておいたバイセルに入れ、-80℃で凍結保存した。凍結保存した細胞を戻したものを試験に供した。

 

(3)対照物質

①陰性対照物質

被験物質の希釈に用いる培養液を陰性対照物質とした。

 

②陽性対照物質

◎TLR2、TLR9

・乳酸菌死菌。用量は、終濃度1mg/mL、100 μg/mL、10 μg/mL、1 μg/mL、0.1 μg/mLおよび0.01μg/mLとした。

 

◎TLR4、TLR4/MD2/CD14

・小麦やサツマイモとの共生で知られるグラム陰性菌パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)から抽出精製したLPS(以降、LPSpと略記)。用量は、終濃度10μg/mL、1μg/mL、100 ng/mL、10 ng/mL、1 ng/mL、0.1 ng/mLおよび0.01ng/mLとした。

希釈操作は全てクリーンベンチ内にて実施した。注射用水に2.5mg/mLになるように溶解し4℃にて保存しているものを、使用時に37℃で5分間加温した後、37℃で超音波処理を1分間行った。処理後、992μLの培養液に8μLを加えよく混ぜ、20μg/mLの溶液を調製した。以降作製した溶液100μLを900μLの培養液に加える操作を繰り返し、10倍の希釈系列を作製した。

 

(4)試薬調製

①培養液の調製

DMEM培地500mL
牛胎児血清55.5mL
ペニシリン-ストレプトマイシン-グルタミン(100×)5.6 mL

調製した培養液は4℃にて保存した。

 

②PBS(-)溶液

PBS(-)100mLに蒸留水を加えて1Lにした。121℃にて20分間、高圧蒸気滅菌を行い室温で保存した。

 

③0.5%(w/v)トリパンブルーPBS(-)溶液

トリパンブルー250mgにPBS(-)を加え50mLにした。この液5mLずつを15mLコニカルチューブに分注し、室温にて保存した。

 

2.試験方法

(1)試験方法概略

各TLR導入HEK細胞を試験液で24時間処理した後、培養液を回収し、培養液中のIL-8濃度をELISAにより測定した。

 

(2)前培養

各TLR導入HEK細胞およびTLR null導入HEK細胞は、調整培養液にて継代培養したものを用いた。培養はT25培養フラスコを用い、3日あるいは4日毎に0.5~1×105cells/mLで植え継いだ。37℃の5%CO2インキュベーター内で培養した。

 

(3)試験操作

試験操作は全てクリーンベンチ内で行った。

 

①T25培養フラスコにて前培養した各TLR導入HEK細胞をピペッティングにより壁から剥がし、得られた細胞の懸濁液を50mLコニカルチューブに移した。チューブを室温で1000rpm(190×g)、5分間遠心分離を行い、上清をデカンテーションで捨て、細胞をペレットとして回収した。

 

②タッピングにより細胞をほぐした後、細胞ペレットに培養液5mLを加え、ピペッティングによって細胞を均一に懸濁した。その後、11μLを別のチューブに移し0.5%トリパンブルーを添加した後、血液計算板に液を移して細胞数と生存率を測定した。生存率(トリパンブルーで核が染色されない細胞を生細胞、核が青く染色される細胞を死細胞として、生細胞/(生細胞数+死細胞数)×100を算出)が、90%以上であったので、残りを試験に用いた。

 

③測定した細胞数に基づいて、残液に培養液を加えて細胞数が4×105cells/mLになるよう調製した。得られた細胞懸濁液を100μLずつ96well平底プレート4枚の各ウェルに加え37℃の5%CO2インキュベーターで、24時間、前培養を行った。前培養終了後、培養液を新鮮な培養液100μLで洗浄した。

 

④被験液は、終濃度の2倍濃度のものを調製し、各ウェルに100μLずつ加えた。各検体を添加後、24時間培養した。

 

⑤各ウェルからの培養上清をIL-8のELISA測定に用いた。培養上清は測定実施まで-80℃で保存した。

 

(4)IL-8 ELISA測定

Biolgend社のHuman IL-8 ELISA測定キットの取扱説明書に従った。

 

(5)試験系の成立条件

培地のみの場合に比べ、各陽性対照物質で刺激した場合に、培養液中のIL-8濃度が有意に高い値を示すことかつ、LPSpを含む培養液の試験群でIL-8が産生していた場合、問題なく試験が行われたと判断した。本試験ではこの条件を満たしており、試験は適切に行われたと考えられた。

 

【結果と考察】

1.結果

各TLR遺伝子導入HEK細胞(TLR2、TLR4、TLR null、TLR9およびTLR4/MD2/CD14)を用いた結果について以下に示した。

 

①TLR null導入HEK細胞(null HEK細胞)

陰性対照のmedium群と他の群において、ほぼIL-8の誘導は認められなかった(表1、図1)。TLR null導入HEK細胞にはTLR遺伝子を導入していないので妥当な結果である。

表1 TLR null HEK細胞におけるIL-8産生

 

図1 TLR null HEK細胞におけるIL-8産生
図はy軸片対数グラフであり、図中のカラムとバーはn=3の平均値とSDを示す。

②TLR4導入HEK細胞

試料の各用量におけるIL-8濃度の数値については、バラつきが大きく有意性に欠け、用量依存性などの明確な傾向が認められなかった。この点については、TLR4のみではなく、共受容体であるMD2およびCD14を加えた3種のタンパク遺伝子を導入したHEK細胞を用いることにより、明確になる可能性が高いと考えられた。

 

表2 TLR4導入HEK細胞におけるIL-8産生

図2 TLR4導入HEK細胞におけるIL-8産生
図はy軸片対数グラフであり、図中のカラムとバーはn=3の平均値とSDを示す。

 

③TLR2導入HEK細胞

陽性対照のLPSpでは10μg/mLの濃度においてもmedium群と同程度のIL-8濃度を示し、IL-8の誘導は認められなかった。RAP99-LPSは0.1μg/mL~10μg/mLの用量において、IL-8の誘導は認められなかった。RAP99熱水抽出物と粉砕懸濁液では、用量依存的なIL-8の誘導が認められたので、IL-2のリガンドを含んでいることが推測される。RAP99粉砕懸濁液の方がRAP99熱水抽出液と比べて同一濃度でより高い値を示した。

 

表3 TLR2導入HEK細胞におけるIL-8産生

図3 TLR2導入HEK細胞におけるIL-8産生         **:p<0.01
図はy軸片対数グラフであり、図中のカラムとバーはn=3の平均値とSDを示す。

 

④TLR9導入HEK細胞

陽性対照のLPSpでは最高用量の10μg/mLの濃度においてもmedium群と同程度のIL-8濃度を示し、IL-8の誘導は認められなかった。RAP99-LPSは0.1ng/mLから10μg/mLの用量において、IL-8の誘導は認められなかった。RAP99熱水抽出物と粉砕懸濁液では、用量依存的なIL-8の誘導が認められた。RAP99熱水抽出物の方がRAP99粉砕懸濁液と比べて同一濃度でより高い値を示した。

 

表4 TLR9導入HEK細胞におけるIL-8産生

 

図4 TLR9導入HEK細胞におけるIL-8産生     **:p<0.01、*:p<0.05
図はy軸片対数グラフであり、図中のカラムとバーはn=3の平均値とSDを示す。

 

⑤TLR4/MD2/CD14導入HEK細胞

陽性対照のLPSpおよびRAP99-LPSでは、0.0001μg/mLから10μg/mLの用量において、用量依存的なIL-8の産生が認められ、0.1μg/mL以上の用量においてはプラトーに達した。RAP99熱水抽出物では0.1μg/mLから100μg/mLの用量において、RAP99粉砕懸濁液では0.01μg/mLから100μg/mLの用量において、用量依存的なIL-8の産生が認められた。明確な用量依存傾向が認められた理由は、TLR4単体だけではなくコレセプターMD2およびCD14の遺伝子を導入したHEK細胞を用いたためであると考えられる。

 

表5 TLR4/MD2/CD14導入HEK細胞におけるIL-8産生

 

図5 TLR4/MD2/CD14導入HEK細胞におけるIL-8産生    **:p<0.01、*:p<0.05
図はy軸片対数グラフであり、図中のカラムとバーはn=3の平均値とSDを示す。

2.考察

(1)RAP99-LPS

RAP99-LPSについては、マウスのTLR4/MD2/CD14導入HEK細胞を用いた測定において、用量依存的なIL-8の産生が認められたことから、TLR4に対するリガンドであることが明らかとなった。他のTLR2とTLR9の経路の測定ではIL-8の産生が認められていないことから、TLR4に対する特異性が高いことが明らかとなった。

ヒトTLR4導入HEK細胞の測定では、有意なIL-8の上昇は認められなかったが、マウスのTLR4/MD2/CD14導入HEK細胞を用いると有意な用量依存性が認められたことから、TLR4を活性化するためには共受容体であるMD2およびCD14の存在が必要であることが示唆された。

 

(2)RAP99抽出物

RAP99抽出物に関しては、熱水抽出物と粉砕懸濁液について、各種のTLR経路での反応性について測定した。その結果より、TLR2、4および9のいずれの経路においてもIL-8の産生が認められていることから、各経路のリガンド効果を示しているものと考えられた。具体的なリガンドとしては、TLR2に対してはペプチドグリカン、TLR9に対しては核酸であることが推測される。

表6 各試料のTLR活性化の結果まとめ

 

 

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